済州海女(ヘニョ)とは?韓国・済州島の女性ダイバー文化を探る

最近、Netflixの韓国ドラマ『폭싹 속았수다(When Life Gives You Tangerines)』が国内外で大きな人気を集めました。このドラマの序盤には、**済州海女(ヘニョ)**が登場し、多くの視聴者の注目を集めました。**済州島(チェジュド)**の暮らしを描く上で、海女の存在は欠かせません。 また、JTBCとBBCスタジオが初めて共同制作したドキュメンタリー番組『ディープ・ダイブ・コリア~ソン・ジヒョの海女体験~(딥 다이브 코리아)』も放送され、済州海女の強い精神力と生き方を繊細に描いたことで大きな話題となりました。 済州海女(ヘニョ)とは? **海女(ヘニョ)**とは、潜水してアワビ、ウニ、海藻などの海産物を採取する女性のことを指します。済州島では古くから「잠녀(チャンニョ)」や「잠수(チャムス)」と呼ばれてきました。「海女」という言葉は、主に日本統治時代以降に定着した表現です。 済州海女は、特別な酸素ボンベなどを使わず、素潜りで海産物を採る伝統的な漁法を今でも守り続けており、世界でも珍しい存在です。日本の「海女(あま)」と並び、素潜り文化を継承している貴重な例とされています。 海女の歴史と広がり 韓国における海女の記録は『三国史記』や高麗時代の文献にも登場します。朝鮮時代には、済州島で採れた海産物(特にアワビや海藻類)は王室への貢物として重要な役割を果たしました。 19世紀には、済州の海女たちは生計を立てるため、済州島を離れて韓国本土や日本、ロシア、中国などの沿岸地域へも出稼ぎに行くようになりました。特に春から秋にかけての季節労働者としての活動が一般的でした。 海女の生活と道具 済州海女が使用する道具には、浮き具である「テワク」、採った海産物を入れるネット「マンシリ(망시리)」、アワビを採るための鉄の棒「ピッチャン」、海藻を刈る「ホミ」、魚を突く「ソサル」などがあります。現在はゴム製の潜水服「ムルオッ(水衣)」や、大きな水中ゴーグル「ワンヌン(왕눈)」を使用しています。 済州海女の教育と共同体 済州の少女たちは幼いころから「エギバダン(애기바당)」と呼ばれる浅瀬で遊びながら水中技術を学びます。通常、7〜8歳で無呼吸潜水を始め、10代半ばには本格的に水中作業を行うようになります。経験と技術により、海女は「上軍(サングン)」「中軍(チュングン)」「下軍(ハグン)」の3つに分類されます。 特に上軍の海女は豊富な経験を持ち、若手海女への指導や共同体のリーダーとして重要な役割を果たします。 無形文化遺産としての価値 海女たちの生活と文化は、韓国の伝統的な海洋文化と女性漁業文化を象徴する存在です。自然との共生、仲間同士の協力、儀式や信仰、そして独自の知識と知恵が詰まった文化です。 2016年には、**「済州海女文化(Culture of Jeju Haenyeo)」がユネスコの無形文化遺産(Intangible Cultural Heritage of Humanity)**として登録され、国際的な評価を受けました。 登録された主な要素には以下が含まれます: 現在の課題と未来 現在、海女の高齢化、地球温暖化、漁業資源の減少などにより、済州海女の数は年々減少しています。それゆえ、彼女たちの文化が無形文化遺産として認められ、メディアを通じて再評価されていることは大変意義深いことです。 Netflixドラマ『폭싹 속았수다』や、BBC&JTBCの共同制作ドキュメンタリー『딥 다이브 코리아』を通じて、韓国の海女文化が世界へ発信されていることは歓迎すべき動きです。 まとめ:済州海女文化を世界遺産として未来へ 済州海女の文化は、韓国だけでなく世界的に貴重な文化遺産です。持続可能な漁業のモデルとして、また女性の強さと共同体の象徴として、未来へと継承されていくべき文化です。

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韓国の海女文化:時代を超えて輝く文化遺産

最近、韓国では海女文化に再び注目が集まっています。Netflixドラマ「本当にお疲れ様でした」(When Life Gives You Tangerines) や、JTBCとBBCが共同制作したドキュメンタリー「Deep Dive Korea: Song Ji Hyo’s Haenyeo Adventure」などが、海女たちの力強い生き様と、厳しい自然の中で築き上げてきた文化を国内外に紹介し、多くの人々の心を捉えています。 海女とは?そしてその歴史 **海女(해녀)**は、特別な機材を使わずに素潜りで海産物を採る女性たちのことです。主に韓国南部の沿岸や島々に居住していますが、特に済州島には世界で最も多くの海女が暮らしており、その文化は世界的に注目されています。 「海女」という言葉は日本統治時代に普及しましたが、済州島では「잠녀 (Jameo)」や「잠수 (Jamsu)」といった伝統的な名称が使われてきました。済州の海女たちは、古くから済州島だけでなく、韓国本土、さらには日本やロシアのウラジオストク、中国の青島など海外にまで出稼ぎに行き、家族の生計を支えてきました。これは、朝鮮時代の「出陸禁止令」によって陸地への移動が制限されていた歴史と深く関係しています。 海女の生活と道具 海女の仕事は、危険と隣り合わせの過酷な労働です。彼女たちは、**テワク(테왁)と呼ばれる浮きと、採った海産物を入れるマンシリ(망시리)**を抱え、素潜りで海に潜ります。アワビなどを採るための鉄製の道具「ビッチャン(빗창)」や、海藻を刈る鎌「チョンゲホミ(정게호미)」、そして漁の時に身につけるゴム製の潜水服「ムロット(물옷)」や水中メガネ「ヌン(눈)」も欠かせません。 世代を超えて受け継がれる知恵と共同体文化 海女になるには特別な訓練が必要です。幼い頃から浅瀬で泳ぎを学び、経験豊富なベテラン海女たちから潜水技術や海の知識、そして共同体の一員としての責任感を学びます。 海女の熟練度に応じて、上軍(上級)、中軍(中級)、**下軍(下級)**の3つの階級に分かれます。上軍の海女は、長年の経験から得た豊富な知識と知恵を若い海女たちに伝え、共同体を牽引する重要な役割を担っています。このような世代を超えた知識の継承は、海女文化の持続可能性を支える基盤となっています。 海女たちの文化は、自然と共生する持続可能な漁法を実践しており、独自の共同体意識、信仰、儀式などを含んでいます。その文化的価値が認められ、2016年には「済州海女文化」がユネスコ人類無形文化遺産に登録されました。これは、韓国にとって19番目の登録となります。 未来へとつなぐ海女文化 現在、地球温暖化や漁場資源の枯渇、そして海女の高齢化により、その数は減少傾向にあります。しかし、このような状況だからこそ、海女文化がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界中でその価値が再認識されることは非常に重要です。 NetflixやBBCのドキュメンタリーを通じて、海女文化はさらに広く知られるようになりました。私たちは、海女たちのたくましい生き方と、自然と共生する知恵に学ぶべきことがたくさんあります。これからも海女とその文化が、韓国だけでなく世界の貴重な文化遺産として未来へと受け継がれていくことを願っています。

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